【STORY】「マクルウ」という社名に込めた思い

~68歳で起業した「マグネシウム狂」が語る~「魔狂う?」と間違えられても気にしない!「マクルウ」という社名に込めた思い

株式会社マクルウ(本社:静岡県富士宮市、代表取締役:安倍雅史)は、実用金属最軽量であるマグネシウムの加工に特化したモノづくりの会社です。2010年に創業し、2014年から事業を開始しました。独自の加工技術によりマグネシウムの新たな世界を切り拓くことで、マグネシウムの特性を活かした部品や製品を通じた様々な問題解決や付加価値の創造を目指しています。

【マクルウのマグネシウム製品部品例】

はじめに

マクルウは、軽くて強いというマグネシウムの特性を活かし、杖や車いすといった福祉介護機器、イスやスツールなどのインテリア、ロボットやドローン用パーツ、さらにはマグネシウムの音響特性を活かした音響部品など様々な展開を進めています。こうした積極的な活動は「マクルウ」という少し変わった社名と関係があります。そこで、「マクルウ」という社名に込めた思いを、代表取締役の安倍雅史(78歳)に聞きました。

【代表の安倍雅史(向かって右側)】

加工が出来ないマグネシウム

-マグネシウムとの出会いを教えてください。

安倍:マクルウを創業する7年前の2003年、私は当時経営した会社(鋼管の冷間引抜き加工事業)の新規事業候補としてマグネシウムパイプの冷間引抜き加工に挑戦しました。冷間引抜き加工とは、パイプなどを常温で金型を通し引抜くことで精度を高める加工法です。

-どんな気持ちで挑戦したのですか?

安倍:当時この加工は、他の金属では極めて一般的な加工法でしたが、マグネシウムでは結晶組織の特徴から不可能と考えられていたようです。当時鋼管加工企業で会長をしていた私は、鋼管(=鉄)の加工を歩んできたため、そうしたマグネシウムの常識とは無縁でした。怖いもの知らずで挑戦したのです。

-そして結果は…。

安倍:鉄の中でも硬いパイプの加工も克服してきたので、「金属だったら何とかなる」という自信がありました。一番新しい冷間引抜き加工設備(以下、Draw Bench)を用いて加工しましたが、加工しようとすると次々と割れてしまい、手がかりすら見つかりませんでした。

【加工時に割れてしまったマグネシウムパイプ】

マグネシウム加工の壁を超える出会い

-転機となったきっかけは何ですか?

安倍:2009年、縁があり訪問した中国企業で「Cold Rolling Machine(以下、CRM)」という設備と出会い、「この設備であれば割れないで加工できるかもしれない」と閃きました。なぜ閃いたのか今もって分かりませんが(笑)、どうしてもマグネシウムのことが忘れられなかったので居ても立っても居られず、誰にも迷惑をかけないよう経営していた会社を後進に譲り、独力で「CRM」を入手しました。

-つまり、一人で始めたということですね。

安倍:はい、手探りで「CRM」を使った加工実験を始めました。全てを知り尽くした「Draw Bench」とは異なり勝手がわからず苦労しましたが、盆栽の手入れをしているような気持ちで不思議と充実していました。すると、ある条件であれば加工時に割れが発生しないことを突きとめました。この発見が、その後の技術確立へ向けた大きな契機となったのです。

-「CRM」が技術確立の鍵となった理由は?

実は、「CRM」は生産性に劣る一世代前の忘れ去られた設備でした。中国企業でこの設備を見たとき、同行していた人たちは「何て古くて生産性が悪い設備だ」と冷笑していました。確かにその指摘は正しいのですが、同時に、何物にも最適化していないプリミティブな設備だったのです。この出会いがマグネシウム加工の道を開きました。

【CRM】

マクルウの由来

-そしてマクルウの創業ですね。

安倍:2010年、「CRM」で得た知見をもとに、株式会社マクルウを創業しました。「CRM」との出会いから、表面的な事象に流されず本質を見極めることが大事であることを学びました。そしてこの学びを社是とするため、「CRM」から2字を取り、MACRW(Magnesium Alloy Cold Rolling Works)という社名にしました。

-CRMが社名の由来ということですね。

安倍:はい。さらに、MACRWを「まくるう」と呼ぶことで、もう一つの思いを込めました。「まくる」とは「競馬などで追い上げて一気に抜く」という意味があります。マグネシウムという新素材の事業は、技術の確立やその伝播に時間がかかりますが、一度動き始めると様々な展開が一気に加速すると期待しています。

-その思いがあったから「社名の由来コンテスト」に応募したのですね。

安倍:はい。2014年、マクルウは「コクヨファニチャー ofon presents 社名の由来コンテスト」にて、社名大賞を受賞しました。不可能と思われていた加工に対し先入観にとらわれずに挑戦し、その思いを社名に込めている点をご評価いただきました。「マルクウ」と間違われることも多く、パソコンで「魔狂う」と変換されたときには驚きましたが、この受賞で更にこの社名への愛着が湧きました。社名に早く追いつくように、まだまだ現役で頑張ります(笑)。

【創業当時の様子】

さいごに

マクルウの社名の由来はいかがでしたでしょうか。マクルウは、創業から4年間の技術的な改良や事業のブラッシュアップ期間を経て、2014年に本格的な事業を開始し現在に至ります。代表の安倍は今年78歳を迎え、今日も生体分解性ステント用極細管の開発に挑む毎日です。

マクルウはこれからも走り続けます。社名に込めた思いを胸に、「魔狂う」ほどの情熱と共に。

【マクルウの技術】

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■マグネシウムの主な特徴について

・実用金属中最軽量(比重1.8)、鉄の1/4、チタンの1/2、アルミの2/3

・比強度(強度/比重)が最大の金属

・振動吸収性、放熱性、生体分解性、人体必須元素

■株式会社マクルウについて http://macrw.com

「マグネシウムの新たな世界を切り拓く」という理念のもと、独自技術である冷間引抜加工技術を核に様々なマグネシウム加工技術を開発。合わせて、ドローン用機体、杖・車椅子など福祉用具、トーンアームパイプ等音響部材の開発を中心にマグネシウムを活用した製品開発を推進。

「社名の由来コンテスト 社名大賞」(コクヨファニチャーofon主催)、「しずぎん起業家大賞 次世代技術部門 最優秀賞」(静岡銀行主催)、「Rise Up Festa 先端技術・素材分野 優秀賞」 (三菱東京UFJ銀行主催) 、静岡県産業振興財団理事長表彰(静岡県産業振興財団) 、日本マグネシウム協会協会賞「技術賞」受賞。